極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉は表紙を手のひらでこすって折り目を伸ばそうとしたが、一度ついた折り目は当然きれいには消えない。
『図書館のホームページで、本の折り目を伸ばす方法が紹介されているのを見たことがあります。確かごく少量の水で濡らして重しをのせる、というような方法だったかと』
 男性に冷静な口調で言われて、二葉は顔を上げた。身長一六五センチの二葉よりも二十センチ近く高い位置に彼の顔がある。
『調べてやってみます。手伝ってくださってありがとうございました。助かりました』
 二葉は気を取り直して礼を言った。軽く頭を下げて、拾った本をカウンターに重ねる。
『お気になさらず』
 男性は短く言って左隣の席に戻った。彼の前のカウンターには、ノートパソコンとスマートフォン、コーヒーカップが置かれている。
 二葉は自分の席に着いた。紙袋を確かめたが、半分以上破れてしまったので、もう本を入れることはできない。
(ほかに袋、持ってきてなかったっけ)
 バッグを膝に置いて中を探ったが、小さめのエコバッグしかなかった。
(これじゃ入らないな……)
 抱えて帰るしかなさそうだ。
 思わずため息を零したとき、目の前に丈夫そうな生成りのエコバッグが差し出された。きちんと折り畳まれた真新しいバッグだ。
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