極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「俺が二葉を探し出す。そして、もう一度出会いから始める」
 彼女と過ごした時間を信じたくて、奏斗は携帯番号を書いたメモ用紙を渡した。
「二葉が連絡してくれるのを待ってる」という言葉とともに……。


***


「それで、奏斗、そのロンドンの彼女からまだ連絡はないのか?」
 バーのカウンター席で、大学時代からの友人、佐久間(さくま)功成(こうせい)が言った。彼は外資系証券会社でアナリストとして働いている。少し柔らかな茶髪で、上質なスーツを着崩しているせいか、軽い男に見られがちだが、付き合って五年になる年下の恋人をとても大切にしている。
「ない」
 奏斗はバーボンのグラスを持ったまま、ぶっきらぼうに答えた。
「まあ、おまえがロンドンから帰ってから、まだ一ヵ月しか経ってないからな」
「まだ一ヵ月だが……一年は待っているような気がするよ」
 奏斗はもどかしい思いでため息をついた。
「どんな美人に迫られてもなびかなかったおまえが、そんなふうに言うなんてなぁ。よっぽど惚れてるんだな」
 功成がしみじみとした口調で言った。奏斗は黙ったまま口元を歪める。
「だけど、待っても連絡してくれる保証はないんだろ?」
 功成は言って、ブランデーのグラスにゆっくりと口をつけた。
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