極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「あのとき俺たちが惹かれ合ったのは、運命としか言いようがないんだ。きっと連絡してくれる」
 奏斗は自分に言い聞かせるように言った。功成は小さく苦笑を浮かべる。
「それなら、素性を明かせばよかったのに。大手建設会社、大槻ホールディングス株式会社の御曹司だって知ったら、女なら誰だっておまえを手放したくないって思ったはずだぞ?」
「……彼女はただの俺と出会って、ただの俺に恋をしてくれたんだ。肩書きに惹かれるような女性じゃない」
「そうかなぁ。天下の大槻ホールディングスじゃないか。世の女は放っておかないだろうに」
「そもそも俺は、大槻ホールディングスとはもうなんの関係もない」
 奏斗の口調が不機嫌そうになったので、功成は肩をすくめた。
「はいはい。考え方が合わないからって、親父さんの会社を辞めて起業したんだもんな。それなら、新興環境コンサルティング企業、コティリードン株式会社の最高経営責任者(CEO)兼社長だって言えば――」
 よかったのに、という功成の声に被せるように奏斗は言う。
「だから、彼女はそんな女性じゃない!」
 奏斗の険しい口調を聞いて、功成は「すまん」と謝った。
「いや、俺の方こそ……。ムキになって声を荒らげてしまった」
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