極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 だから、葬儀以来、連絡を取っていなかった。母方の祖父母は何年も前に他界していたので、父方の祖父母が唯一の身内だったのだけれど。
 両親の葬儀での出来事を思い出して怒りが湧き上がってきたが、それを静めるように二葉はゆっくりと息を吐き出した。
 二葉が何も言わないからか、古谷が話し始める。
『突然お電話してごめんなさいね。実はおじいさんが今朝、自宅で倒れて、救急車で病院に運ばれたんです』
「えっ、なにがあったんですか?」
『私も詳しいことは……。今、奥さん――あなたのおばあさんが病院に付き添っています』
 ふと〝死〟という一文字が脳裏をよぎった。
 もう会いたくないと思っていた相手だったが、もしものことがあれば二度と会えなくなってしまうのだ。
 二葉と血のつながりがある、唯一の身内。
 二葉の心にじわりと不安が生まれた。
『さっき奥さんから電話があったんですけど、かなり取り乱しているご様子で。息子さん夫婦も亡くされているでしょう? 独りぼっちになるんじゃないかって不安なんだと思うんです』
 この古谷という女性はどこまで二葉たちのことを知っているのだろうか。
 二葉は訝かりながらも黙って話の続きを待つ。
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