極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
『奥さんはあなたに電話したいけど、その、あまり関係がよくないからって迷ってらしたんです。私、奥さんには普段からよくしてもらってて、奥さんも私にいろいろお話ししてくださって。それで、以前、息子さんご夫婦のことも……』
「祖母から聞かれたんですね」
『はい。〝おじいさんが頑固なせいで、たった一人の孫娘にも会えないの〟って悲しそうにおっしゃってたんです。それを思い出して、私、お節介だと思ったんだけど、こういう状況だし……おじいさんになにかあってからでは遅いと思って……おばあさんからあなたの携帯番号をお聞きして、代わりにお電話させてもらったんです』
「そうだったんですか……」
 両親の葬儀のあとで、祖母に『なにかあったときのために』と言われて、携帯番号を教えたことをうっすらと思い出した。
『部外者の私が言うと気を悪くするかもしれませんけど、おじいさんもおばあさんも、もうずいぶんお年でしょう? 今はまだ許せないとしても、あと何年か、何十年かして……もしお二人に会いたいと思っても、そのときに会えなくなっていたら……絶対に後悔すると思うんです』
 二葉は唇を引き結んだ。
 頭では古谷の言うこともよくわかる。よくわかるけど……。
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