極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 そして、次に祖父母に会ったのが両親の葬儀のときなのだから、祖父に対していい思い出はなに一つない。
(それでも……おばあちゃんには電話してあげなくちゃ)
 それが唯一の孫である自分の義務だと思う。
 二葉はベッドの縁に座り直して、スマホの住所録から祖母の電話番号を探し出した。古谷に教えてもらった番号と同じだ。
 通話ボタンにタップすると、三回の呼び出し音のあとで電話がつながった。
『も、もしもし、二葉ちゃん?』
 祖母の声は震えていた。
「はい」
『ほ、本当に二葉ちゃんなの?』
「はい、そうです。古谷さんから連絡をいただいて、お電話しました。おじいちゃんの様子は――」
 どうですか、と言うより早く、祖母の声が返ってくる。
『おじいちゃんのことは本当にごめんなさい。あんなこと、独りぼっちになった二葉ちゃんに言ったらいけなかったのに』
 あんなこと、とは葬儀のときの祖父の言葉のことだろう。
「おばあちゃんが言ったわけじゃありませんから」
『でも、本当なら私たちが二葉ちゃんの面倒を見なくちゃいけなかったのに』
「あのとき私は二十七歳でしたから、おばあちゃんやおじいちゃんに面倒を見てもらわなくても大丈夫でしたよ」
『そ、そう?』
「はい。仕事もしてましたし」
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