極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 駆け出しのフリーランサーでしたけど、という言葉は祖母が心配しそうなので呑み込んだ。
『そうなのね……』
 祖母の言葉が途切れた。どうしたのかと耳を澄ませたら、かすかに嗚咽をこらえるような声がする。
「それで、おばあちゃん、おじいちゃんの容態は……?」
 二葉の問いかけに、祖母の涙混じりの声が返ってくる。
『手術が必要なんですって。このまま目覚めなかったらどうしよう……』
「おばあちゃん……」
『一緒にいてもらえないかしら……?』
「えっ」
『おじいさんが入院している間……独りでいるのは心細いの。息子に先立たれ、夫にまで先に逝かれてしまったらと思うと、不安でたまらないのよ。勝手なお願いなのはわかっているんだけど……』
 祖母の悲痛な涙声を聞いて、今までずっと両親のことを認めてこなかった祖父母に対する反発が、徐々に薄れていく。
(このまま会わずにいたら……いずれおじいちゃんとおばあちゃんにも、二度と会えなくなってしまうんだ……)
 そうしたら、自分は本当に独りぼっちになってしまう。
 二葉は気持ちを固めて大きく息を吸い込んだ。
「わかりました。でも、今イギリスにいるので、すぐには会いに行けません」
『イ、イギリス!?』
 祖母の声が驚きで跳ね上がった。
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