極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「はい。実は今、フリーランスで仕事をしているんですが……」
 二葉は夢を叶えるためにイギリスに来ているのだと簡単に説明した。
「なので、今から航空券を手配して、飛行機に乗って……となると、早くても二、三日後になると思います」
『……そ、そうなの』
 電話の向こうで祖母が震える声で続ける。
『ごめんなさいね。でも、来てくれたらとても心強いわ』
「はい」
『待っているからね』
 祖母は本当に心細いらしく、声には不安がありありと滲んでいた。
「はい。必ず会いに行きますから」
『できるだけ早くお願いね』
「はい、もちろん」
 そうして名残惜しそうな祖母を何度も慰めなだめて、二葉は通話を終えた。



 その翌々日の昼前、二葉は機上の人となった。
 祖母の電話のあと、バスと列車を乗り継いでコッツウォルズからロンドンに戻った。諸々の手続きを済ませて一番早く取れた便で、ヒースロー空港から日本に――関西国際空港に――向けて出発したのだ。
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