君に恋した、忘れられない夏




「うっ、うう…っ。嫌だ、私もうおばあちゃんちに住むの…」


「わがまま言わないの、陽葵!明日の朝には帰るんだから、早く支度してって言ってるでしょ!」




お母さんの声が聞こえないように布団を頭から被る。


明日はついに東京に帰らなきゃいけない日。



昴と別れるのがどうしても嫌で、お母さんにこっちに住みたいと頼んでみたがやっぱりダメだった。




「陽葵、いつまでも泣いてないで…」


「お母さんなんて嫌い!」


「あ、陽葵!」




おばあちゃんちを飛び出して、いつもだったら怖くて絶対行けない、暗い砂浜をお構いなしに走って展望台に向かう。




「え…昴…?」




まさかいるとは思っていなかった昴がベンチに座っていて、驚く。




「あ、やっぱり。なんとなく陽葵ならここに来る気がした。…泣いてるの?」
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