君に恋した、忘れられない夏
「うっ…ううっ…」




その場に座り込んで泣き出した私に昴が慌てて駆け寄ってきた。




「私…かえり…たくない…。うっううっ…昴と、はなれ…ったくない…っ」


「陽葵…」




昴は私をぎゅっと強く抱きしめると、背中をぽんぽんと優しく撫でてくれた。




「大丈夫だよ。来年もまた、ここで会おう」


「来年も…?」


「うん。来年の夏、またここに来てよ。この展望台で待ってるから。約束だよ」




昴に小指を絡め取られ、自然と笑顔になっていた。




「うん、約束!」







約束、したのに。昴は来てくれなかった。四年も変わらず夏休みにはあの展望台に行っていたのに、昴は会いに来てくれなかった。


だから私も会いに行くことをやめた。
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