君に恋した、忘れられない夏
「あ、陽葵?起きた?」




むくりと起き上がると、先に起きていた昴が隣に座っていた。




「…あれ?どうしたの?」


「え?」




昴がすっと頬に手を伸ばしてきた。


触れられてから気づいたが、なぜか私はぽろぽろと涙を流していた。




「怖い夢でも見た?」


「…ううん、違うの」




どうしてだろう。止まってくれない。


昴はそれ以上何も聞くことなく、私の頭を優しく撫で続けてくれて懐かしいその温もりに余計涙が止まらなかった。



本当は何もかも聞いてしまいたかった。


でも、もう一度手に入れたこの幸せな日々を壊したくなかった。


余計なことをしてまた昴がいなくなってしまいそうで怖い。
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