君に恋した、忘れられない夏
「明日は夕方まで学校で、一緒にお祭りは回れないんだけど…花火はここで一緒に見よう。きっとこんな穴場、誰もいないだろうから。俺と陽葵だけの特等席だね」


「…うん!」




昴はいつだって私の不安を一瞬で吹き飛ばしてくれる。



夏休みも残りわずか。


もう、ここにいたいなんてわがままは言えないけど、本当はずっと昴といたい。



昴にちゃんと聞きたいことを全部聞こう。そして、また約束をする。


昴が私の約束を破るわけないから、きっと何か事情があったに決まっている。いつまでも怖がっていないで、ちゃんと昴と向き合おう。





次の日。約束していた時間よりも少し早めにおばあちゃんちを出る。


友達と花火を見てくると言ったらおばあちゃんが浴衣を出してくれたけど、なんだか気合いを入れている人みたいで気恥ずかしくて、結局白の少し可愛いワンピースを来て家を出た。


少しでもおしゃれをしたくて、いつもは高めに結んでいるツインテールを、今日は下ろして少し巻いてみた。それにメイクも軽くした。



昴に可愛いって言ってもらえたらいいな、なんてそんなことを考えながら砂浜を歩いていると、いつもは人だけで溢れているのに今日は屋台もいくつかちらほらと並んでいた。


屋台を見ていたらどうしても買いたくなり、結局焼きそばとリンゴ飴とわたあめとイカ焼き…とにかく両手が塞がるくらいたくさん買ってしまった。


昴と一緒に食べればいいか、と細い階段を両手と目の前も塞がっている状態でなんとか上りきり、誰もいないベンチに座る。


いくら穴場でも誰かいるかな、と少し心配だったがどうやら杞憂だったようだ。
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