君に恋した、忘れられない夏



陽葵へ



この手紙を読んでいるということは、きっと俺はもう死んでしまったんだね。



陽葵に何も言わずにいなくなって、ごめん。俺は七歳の冬から、病気でずっと入退院を繰り返していました。


心臓の病気で、余命宣告までされた。俺が死ぬのは、五年後の夏頃だって言われていたんだ。


だから五年間、ずっと病院で過ごしていたから陽葵との約束も守れなかった。ごめんね。



でもいざ五年後の夏が来てみても、俺は死ななかった。むしろ良くなっていたんだって。


嬉しかった。死ぬと思って諦めていた命に、もう一度希望を持てたから。


だから十二歳の夏、あの展望台に行って陽葵を待っていた。…だけど、陽葵は来なかった。


それもそうだよね。先に約束を破ったのは、俺だから。



それでも俺は、毎年夏になるとあの展望台で陽葵を待つことにした。本当はどんな手を使ってでも陽葵に会いに東京まで行きたかったんだけど、病気の影響で体力がなくて遠い東京まではとても行けそうになかったんだ。


そして、高校生になって、俺の病気は再発した。


元気だった時が嘘のようにどんどん悪くなっていって、高一の夏にはもう一度病院生活が始まってあの展望台に行くことはできなくなった。



高二の夏が再び迫ってきている今日。


俺はこの手紙を書いています。病気のせいで文字を書くことですら疲れてしまうから、一日で書ける量はほんとにわずかで陽葵に伝えたいことはたくさんあるのに書けないもどかしさ、苛立ち、どうして俺なんだって気持ちで頭がおかしくなりそうだよ。
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