君に恋した、忘れられない夏



「おはよーおばあちゃん。…あれ、お母さんたちは?」




次の日。九時くらいに起床して居間に行くと、お母さんたちの姿はなく、荷物もなくなっていた。




「なんだか急な仕事が入ったみたいで、朝早くから東京戻っていったよ。ひまちゃんにメール来てるはずだけど…」


「あ、ほんとだ」




スマホを確認するとお母さんからメールが届いていた。


仕事なら仕方がない。



朝からお腹いっぱいになるくらいの朝ごはんを食べて、散歩がてら外に出る。



田舎だから畑が多く、高いビルやコンビニなんかも全く見当たらない。


いつもと違う景色に、自分がどこか異世界に来てしまったような感覚になる。



昨日車の窓から見えた海に向かうと、そこそこ有名な海だからか観光客がちらほらといた。



人が全く見当たらなくなるほど砂浜をしばらく歩いていく。


そして行き止まりの壁の端にある、見落としてしまいそうなくらい細い階段を上っていく。


この階段は小さい頃ならなんなく登って行けたけど、高校生になった今では少し体を斜めにして上がらなきゃいけないほど細い。



昔と変わらないなら、この上は展望台になっていて、海を見るならここが一番の穴場スポットだ。
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