君に恋した、忘れられない夏
昴が目を細めながら優しく笑った。笑うと目が細くなるところ、全然変わってない。




「今もツインテール、変わってないんだね」


「え?あ、ああ、うん」


「ずいぶん髪の毛伸びたね」




昴がスッと近づいてくると、私の高めのツインテールを両手で掴んで持ち上げてきた。




「や、やめてよ…!子供じゃないんだから…!」


「ああ、ごめん」


「昴は…前髪、伸びすぎ!目に入りそうだよ!しかもそれ、制服、高校の?」


「え?あ、うん。俺の高校進学校だから、高二の夏から受験勉強始めるんだよ。だからこれから学校行って勉強」




昴の見慣れない制服姿を、本当は目に焼き付けて起きたかったけどじーっと見ているわけにもいかず、視線を軽く向けて逸らす。



私が昴と初めて会ったのは七歳の頃で、ちょうどこの時期にこの展望台で出会った。


夏休みということでおばあちゃんちに遊びに来ていた時に、砂浜を探索していたらあの階段を見つけ、この展望台と昴を見つけた。


同い年だった昴とはすぐに仲良くなり、夏休みいっぱい毎日のように遊んでいたけど、夏が終わると同時に私は東京に帰った。



昴とはまた来年会おうと約束をして別れ、次の年もこの町に来たけど、昴とは会えなかった。


いつも会うのは展望台でばかりだったから、昴の家なんて知らなかったし連絡先も何も知らなかった私には、展望台で待ち続けることしかできなかった。



だから次も次の次の年も、毎年のように展望台で待っていたけど、昴とは会えることはなく、だんだんと会いに行くためにこの町に来ることもやめてしまった。


昴は私のことなんて忘れてどこか遠くに行ってしまったんじゃないか、会いたくないんじゃないか、とマイナスなことばかり思い浮かべてしまい、昴に会いに行くことが怖くなってしまったから。
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