君に恋した、忘れられない夏




「陽葵!こっちこっち!」




昴に見せたいものがあるから夜こっそりおばあちゃんちを抜け出して展望台に来るように言われて、行ったことがある。


その頃の私は幽霊を本気で信じていたから、月明かりだけが頼りの暗い砂浜も細い階段もすごく怖くて、展望台に着いた時は半泣きだったくらい。



だけど昴はよほど見せたい何かに夢中だったのか、そんな私に気づきもせずにたった一つあるベンチに座って片手を上げてきた。




「何?見せたいものって…。早くしないと、暗いから幽霊来ちゃうよ…」


「幽霊?」




昴はきょとんと首を傾げた後、何が面白かったのか大声で笑い出した。




「大丈夫だよ。今から見るもので、きっと陽葵の頭はいっぱいになるから。それに、もし幽霊が出たとしたら俺が守ってあげるから」




昴はそんなドキッとするセリフをさらりと言うと、私の手を握って空を指差した。




「そろそろだよ」


「そろそろって、なにが…」
< 7 / 36 >

この作品をシェア

pagetop