ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「まぁ! なんて品のない! びしょ濡れじゃないの!」と、コートニーは今度は仰々しく肩を竦めた。
「これじゃ風邪をひいてしまうわ。クロエ、早く脱ぎなさい? すぐに温めないと」
クリスがニヤニヤと含み笑いをしながら継子を急かした。
しかし、クロエは身体を震わせるだけで、返事もせずに丸まったままだった。
クリスは「おや」と一瞬眉を上げて、メイドに目配せをしてクロエの古めかしい粗末なドレスを脱がせた。
彼女は抵抗する気力もなく、人形のように操られて、あっという間に下着姿にされたのだった。
「あぁ、良かった」クリスは笑顔で胸元で両手を叩く。「あのままだと冷えて風邪をひきそうだったもの。これで大事な娘の身体を温められるわ」
そしてクリスは、ポットの湯をまたもやクロエの頭上からゆっくりと流した。
「冷えないように、あたくしが温めてあげるわね」
「っつ……!」
熱湯がクロエの白い肌を直接襲いかかった。
刺すような痛みが肌を伝って、染められたみたいに真っ赤になった。
彼女は耐えられずに、反射的に仰け反る。それが継母の怒りを買って、湯の量が更に増えた。
クロエは歯を食いしばって我慢する。少しだけ……少しの間だけの辛抱なのだ。
二人が飽きたらまた平穏に戻る。じっと耐えて、嵐が過ぎるのを待つだけだ。