ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(きっと、仕事中なのに私が邪魔をするような真似をしたから、彼らを怒らせてしまったんだわ)
クロエは反省をして、自分で調べることにした。
たしか、侯爵家の図書室に薬草についての本があったはずだ。それを参考に、薬草として植えてあるものと、雑草を区別しようと考えたのである。
図書室は父親の書斎の近くにあった。
そこには魔導書を中心に、貴族名鑑や政治や法律などの多岐に渡る種類の本が並べられてある。クロエがいつも勉強に参考していた魔導書も、ここから借りていた。
屋敷の中でひときわ大きい重厚な扉を開けると、高い天井の広々とした空間が広がっている――はずだった。
「あら……?」
クロエは眉をひそめる。いつもは鍵をかけずに開放してあるはずの扉が、今日に限って閉ざされていたのだ。
もしかしたら執事が鍵を開けるのを忘れたのかもしれない……と、彼女は彼らの執務室へと向かった。