ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「君の母君は……右?」
クロエが母の話をすると、彼は目を剥いて顔を強張らせていた。
「えぇ、たしかに右目だったわ。……どうしたの?」と、彼女は首を傾げる。彼は顎に手を当てて、なにやら考え込んでいるようだった。
ややあって彼が口火を切る。
「その、母君は目のことでなにか君に言っていたか?」
「えぇっと……たしか、過去に自分の力量以上の魔力を無理に使ったから、輝きは弱くなったって言っていたわ。言われてみれば、あなたのほうがキラキラしてるわね」
クロエは再び彼の双眸を眺めた。
母親の瞳はまれに流れ星が流れるような煌めきを帯びていたが、彼のほうは水面が太陽を反射したみたいに、絶え間なく光っていた。
「あー……」彼がおずおずと口を開く。「君の母君は……その……」
クロエは軽く頷いて、
「そう。もう、この世にはいないわ」
「済まない、悲しいことを思い出させてしまったな」
「いいえ。もう昔のことだから。平気」
「そうか……」
彼は気まずそうに頭を掻く。少しの沈黙。
そのとき、