ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
――ぐうぅぅぅぅ…………。
にわかにクロエが顔を真っ赤に染める。
静謐な図書館に、彼女の空腹の叫びが響いたのだ。
(嫌だわ、私ったら……恥ずかしい!)
羞恥心で思わず俯く。全身がかっと熱くなった。
最近は、クロエが厨房のゴミを漁っているのを知ったコートニーが、嫌がらせにゴミ箱を隠していて、食事ができない日もぽつぽつあった。
そこで彼女は図書館で読んだ図鑑をもとに、庭でただの雑草を選別して口にしていた。
しかし、それだけでは空いたお腹は満たされなかったのだ。空腹状態には慣れていたものの、彼女のお腹は主の意図なんて気にせずに、突然に鳴くこともあったのだった。
彼はそんな彼女のことを馬鹿にすることもなく、
「そろそろ昼だな。よし、一緒に食事をしよう。今日は行列ができる有名な店のスコーンを買って来たんだ」
ふっと笑って、彼女の手を取った。