ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「素敵な場所……」
クロエが彼に連れて行かれた場所は、図書館の裏側を進んで、少し階段や坂道を登ったところにある丘だった。
子供が走り回れるくらいには十分な広さで、今では使用されていない鐘塔が建っていた。風が心地よくて眺めのいい場所だった。
「俺が王都で一番気に入っている場所だ。特にあの塔の上からの景色は最高なんだ」
「えっ、古くて危なくないの?」
「大丈夫だ。……多分ね。とりあえず、まだ落ちたことはない」
しばらく二人で眼下の景色を眺めた。
街は活気だっていて、クロエには眩しかった。
母が死ななければ、継母と異母妹が来なければ、自分もあの中で笑っていただろうか。……そんな考えても仕方のないことが自然と頭を過ぎった。