ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「ごちそうさま。とっても美味しかったわ。泣いちゃうくらいに」
すっかり平らげたあと、クロエは泣いたことを心配かけまいと、努めて明るく礼を言った。
「どういたしまして。――ところでさ、その……」と、ユリウスは遠慮がちに彼女を見る。
「どうしたの?」
「いや……余計なお世話かもしれないが」彼は一瞬だけ黙ってから意を決したように再び口を開けた。「令嬢に失礼かもしれないが、君は……少し痩せ過ぎているように見える。日頃はちゃんと食べているのか?」
クロエは骨と皮だけみたいに痩せ細って、華奢を通り越した薄い身体は、ドレスの上でもはっきりと分かるくらいだった。
「それは……」
クロエは口ごもる。なんと答えればいいか分からなかった。
ユリウスは、自分のことを本気で心配してくれているように見える。
でも、本当のことを言ったら、パリステラ家の名誉に関わると継母から折檻されるかもしれないし……なにより自身がゴミ箱を漁っている事実を知られるのが、恥ずかしかった。
彼が知ったら忽ち軽蔑されるかもしれない。
せっかく出来た友人とすぐお別れなんて、嫌だ。