ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「なっ……」
ややあって、少し顔を上気させたクロエが、くすくすと笑い出した。
「墓場までって……おかしい冗談を言うのね」
「っつ……!」
ユリウスの白皙の顔がみるみる紅潮した。
やってしまった。嬉しさの余り、ついプロポーズのような言葉を走ってしまった。
急激に気まずさが彼を襲う。
「でも、そんなに喜んでくれて、私も嬉しいわ。頑張って作った甲斐があったわね」
「あぁ! 本当に嬉しい! ――そうだ、もう昼も過ぎてるし、これからどこか食事に行かないか? 令嬢に人気のレストランがあるんだ」
「えっ……」
彼の提案に、彼女は顔を曇らせる。
誘ってくれることは嬉しい。感謝しているし、自分も彼と一緒に行きたい。
(でも……)
彼女は顔を伏せた。着ているドレスはもうぼろぼろで、あまり人前に出たくなかった。
彼は、いつも清潔で貴族らしい格好をしている。そんな素敵な彼の隣に立つのが、申し訳なく思ったのだ。