ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「嫌かな……?」と、彼は困惑顔で尋ねる。
彼女は強く否定するようにぶんぶんと首を横に振って、
「いいえ。凄く、嬉しいの。でも、この格好では……あなたに恥をかかせるわ」
スカートを軽く摘んで、安く買い叩かれた古着みたいなドレスを、悲しそうに見せた。
彼ははっと目を見開く。
そうだった。女性にとって、身なりとは大事なことだった。
それを軽んじているような言動をするなんて、なんて自分は馬鹿なことを言ったのだろう。
今の状態は、自分が彼女に恥をかかせている。とんだ失態だ。
「ごめん……君のことを全然考えていなかった。そうだな……」彼は少しだけ思案顔をして「じゃあ、王都の屋台の食べ歩きはどうだ? 俺と一緒に食い尽くそう」
彼女は少し目を見張ってから、
「もう、食べ尽くすなんて」
おかしそうに、くすくすと笑う。彼の気遣いが胸に染みた。
「決まりだな。さぁ、行こう!」
ユリウスはクロエの手を取った。
勢い余って強く握ると、彼女もぎゅっと握り返してくれた。