ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「なに、あれ……」
コートニーは無感情な声をぽつりと上げた。
奇しくもその日の同時刻、コートニーとスコットも王都に遊びに来ていた。令嬢に人気のレストランに婚約者同士で来たのである。
その帰り道、少しショッピングでもしようかと、二人は大通りを歩いているところだった。
クロエがいる。
しかも、男と一緒だった。そして、とても楽しそうに……。
「………………」
スコットは黙り込んで、氷のような冷たい視線を元・婚約者に向けた。
あぁ、本当に彼女は男遊びをしていたのだな……と実感すると、彼の中には嫌悪感がみるみる満ちていった。
(汚らわしい)
自分はあんな女に騙されていたのか。不貞の……下男の娘のくせに、正統なる公爵令息である自分のことを。
彼の心の中は、もう彼女に対する愛情なんて、少しも残っていなかった。