ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「お異母姉様も、困りものだわ」
コートニーは、わざとらしく肩をすくめる。そして、ちらりと婚約者の様子を見た。彼の心にはもう未練なんて皆無なのだと確認すると、ほくそ笑んだ。
「行こう。あれを目に入れたくない」
スコットは冷淡に答える。そして、婚約者の腰を抱いて、踵を返した。
(お異母姉様の隣の男……凄くいい男じゃない!)
ユリウスは背丈が高くて、ほぅと息を漏らすような美しさを持っていて、帝国の令嬢たちから人気が高かった。
コートニーもまた、彼に見惚れる。彼の前では、隣の婚約者も霞んで見えた。
どこの令息だろうか。身なりが良くて、姿勢も綺麗で。きっと貴族だ。
異母姉は、本当に男をたらしこんでいたのだろうか。
(許せない……)
クロエが自分よりも良い思いをするなんて、絶対に許せなかった。
あんなに笑顔で……あの女が幸せになるなんて、許せない。
(今度こそ、潰してやる)
にわかに、コートニーの頭の中に、とある閃きが起こる。
それは、異母姉を完膚なきままに叩き潰す、素晴らしいアイデアだった。