ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「クロエ」と、ロバートの冷たい声が頭上で響く。
「はい」
彼女は父親の目を見て、はっきりと返事をした。
少しだけ期待があった。父なら、少なくとも現状を変えてくれるのではないかと。
唯一、血の繋がった、父なら……。
「お前の処分が決まった」
しかし、彼女の淡い期待はもろくも崩れ去った。
峻厳な父の視線が彼女を貫く。
「お前は明日付で貴族籍から抜けることとなった。そして、明日、娼館へやる」
「……………………っ」
それは、終焉の宣言だった。
刹那、身体中が逆立って、世界が真っ暗になった。太陽と月がひっくり返ったように、彼女の心は動転する。