ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「どっ……」掠れた声を一生懸命振り絞る。「どういう、こと……ですか?」
「どういうこと、って」ふいにコートニーが吹き出した。「お異母姉様が一番分かっているでしょう?」
「えっ……?」
「あなた、王都の街で男をたらしこんでいるんですってね?」と、今度は継母が彼女を制した。眉を大きく上げて、顔を歪めている。
「私、そんなこと――」
「とぼけないでちょうだい? 先日、コートニーが見たのよ。たいそう見目麗しい殿方とご一緒だったってねぇ?」
「それは……」
ユリウスのことだと、クロエは悟った。
きっと、彼と街で食べ歩きをしていたときに、異母妹に目撃されたのだろう。
「もう、びっくりしたわよ!」とコートニー。「お異母姉様にあ~んな美形の男がいたなんて!」
「彼は、ただの友人よ……!」
「えぇ~っ! あんなに仲睦まじく寄り添っていたのにぃ~? あたしはてっきり、もう身体の関係もあるのかと思っていたわぁ~。だって、お義母姉様ったら、男なら誰でもいいんでしょ?」
「……彼はそんな不誠実な方ではないわ」と、思わず言い返す。間接的にユリウスのことまで蔑まれて悔しかった。
「はぁ? あんたの意見なんて聞いていないのよ!」
コートニーが手を上げる。ユリウスのお陰で少し肉の付きはじめた頬に、貼り付くように炸裂した。
「まぁまぁ、落ち着きなさい、コートニー。侯爵令嬢がこんな汚らわしいものに触れてはならないわ」とクリス。
「いいこと、クロエ? これは、あたくしたちからの恩情よ?」