ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「……………………っ」
総毛立った。心臓が凍り付いて、止まりそうだった。
にわかに全身が震え始めて、がちがちと歯が鳴った。胸が苦しくて、吐きそうだった。
(どうして……そうなるの…………)
ここでは、自分の意見なんて通らない。
いつの間にか事実は歪曲されて、嘘が本当になって、誰も信じてくれなくて……父親でさえも…………。
「あっ、そうだわ!」コートニーの明るい声が響く。「初めての客は複数人を相手にするのがいいんじゃない? 男好きなお異母姉様なら、きっとできるはずよ!」
「そうね。クロエも刺激が欲しいわよね。ただの男遊びには飽きたでしょうし」
「あと! 初仕事の様子を公開する、ってのもいいかもね。きっと初日から一番の売上を叩き出すわよ、お異母姉様! あたし、スコット様と見物に行こうかしらぁ~?」
「あら、それはプロとして良い経験ができそうね。娼館のオーナーに話をしてみましょう」
目の前で繰り広げられる、悪魔のような残忍な会話も、もう彼女の耳には入って来なかった。