ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
図書館は既に閉まっていた。
もう夜も近いし、この悪天候だから早く閉館したのだろう。もともと、こんなずぶ濡れで図書館に入るなんてできなかったので、変な安堵感があった。
もし、今の状態でユリウスに会いでもしたら、めちゃくちゃに掻き乱された泥みたいな感情を、全て吐き出しそうだったから。
彼とは、楽しい思い出ばかりを共有したかった。
そっと踵を返す。
向かうのは、パリステラ家の屋敷ではなく、図書館の裏の丘の上。
今の彼女の居場所は、もう、そこしかなかった。