ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
翌日は早めに起きた。
これから始まる新たな人生のことを考えたら、興奮で目が冴えた。
もう体調は万全だが、万が一でも父親と顔を合わせるのが嫌だったので、朝食は部屋に運んでもらった。
父ロバートは、愛人たちの屋敷に泊まっても、執務をおこなうために毎朝パリステラ家に戻って来るのだ。
朝食を摂り終わると、クロエは懐かしさを覚えながら鏡台に座って、マリアンから髪を梳いてもらった。
鏡の前に映る自身の顔は、血色が良くて瑞々しくて、まさに健康そのものだった。
(これなら、ゴーストだって言われないわね)
クロエは苦笑いする。あの逆行前の最悪な日々は、自分でも驚くくらいに痩せ細って、髪もぼさぼさだったから。