ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
刹那、どっと一突きされるように、急激に胸の奥が熱くなった。
魔力を感じる。
母に託されたペンデュラムから感じるものと同じ魔力が……自身の中に。
それは、どんどん膨らんでいって、クロエの体内を満たしていった。
(まさか……!)
彼女は目を閉じる。両手に精神を集中させて、体内に巡る魔力を集約させる。
集中……集中……魔力を集中…………、
次の瞬間、閃光が走って、
――ドォンッ!!
耳をつんざくような爆音。
そして、がらがらとなにかが破壊されるような、けたたましい金属音。
瞼の裏が明るくなって、目を開けると、
「お……お嬢様……!」
鏡台の鏡も窓ガラスも粉々に砕け散って、天蓋付きのベッドや、チェスト、ソファー、机、椅子、花瓶――部屋中のものが、全て破壊され尽くしていたのだ。