ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「そうなんです! クロエお嬢様の魔法の力なんですよ、旦那様!」
しばらくして、不穏な空気に耐えきれなかった侍女が明るい声音で、二人の間に割って入った。
「そうか!」
ロバートは思わず顔が綻ぶ。想定外の喜びが彼を包み込んだ。
出来損ないだと思っていた娘に、このような力が宿っていたとは。
彼は、魔力の高い家系という理由だけで政略結婚をした女との生活に、ずっと前より嫌気が差していた。
顔も好みではないし、性格も合わない。おまけに、高魔力を期待して生まれた娘は、低魔力どころかゼロだ。
これでは、なんのために我慢してあの女と婚姻を結んだのか。
彼の落胆は、やがて怒りに変貌して、妻も娘もいつの間にか憎悪の対象になっていった。
だから、妻が病に倒れてもなにも感じなかったし、魔法が使えない娘も煩わしかった。
自分にはクリスとコートニーがいる。しかも、コートニーの中には、強い魔力が眠っていることも感じ取っていた。
だから彼には、本当の妻と娘――二人さえいれば良かったのだ。
しかし、ここに来てまさかのクロエの魔法の覚醒だ。しかも、コートニーの魔力を凌ぐ力を持っている。
この事実は、ロバートを大いに歓喜させた。