ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「凄いじゃないか、クロエ!」
嬉しさのあまり、彼は思わず娘を抱きしめた。
だが――、
「離れていただけます、お父様?」
娘は父の胸をぐいと強く押して、即座に一歩後ろに下がる。
「クロエ……?」
あからさまな娘の拒否に、彼は目を見張って驚く。
「……まだ、体調が万全ではないのです。ですので、疲れさせるようなことをしないでください」と、彼女は冷たく言い放った。
「おお……そうか。それは済まなかった。と言うか、もう起き上がっていられるなんて驚いたぞ。体調は大丈夫なのか?」と、ロバートはマリアンを一瞥してから再び娘を見る。
「マリアンには、私の方からお父様には伝えなくて良いと言ったのです。お忙しいでしょうから、色々と」
すると、すかさずクロエが侍女を庇った。彼女は今も険しい表情を崩さない。
そんな娘の不機嫌な様子に戸惑いながらも、強い魔力に覚醒した自慢の娘との交流を図ろうと、弾む声音で語りかける。
「そんな、他人行儀な。遠慮しなくていいのだぞ。私たちは血の繋がった親子なのだから」