ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「私は考えたのです。お母様亡き今、侯爵家の人間としてどういう行動を取るべきかを。お父様は、王宮の仕事や領地の管理など、忙しくされております。では、娘の私にはなにができるのだろうか。――そう考えたとき、元は侯爵夫人であるお母様が行っていた仕事を、娘の私が代わりに務めるのが一番良いのではないかと思い当たりました。魔法も使えるようになりましたし、少しは侯爵家の人間として役に立ちたいのです」
娘はまっすぐに父の双眸を見た。その瞳の奥に映る芯の強さに、ロバートは感銘を受けた。
(なんと殊勝な……!)
全身が打ち震えた。
まだ小さな子供だと思っていた娘の、予想外の志の高さ、そして類なき素晴らしい魔力。
まさしく、パリステラ侯爵家の高貴な血を受け継いだ、自慢の娘だ。しかも、褒美に物を強請るどころか、家の役に立ちたいと願うなんて。