ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
侯爵は、胸の奥から嬉しさが込み上がって来て、覚えず相好を崩した。
「そうか、そうか。そんなことなら、私も大賛成だ。お前の能力なら、見事に屋敷の差配がこなせるだろう」
「ありがとうございます、お父様」
「ところでクロエ、他に欲しいものはないのか? ドレスでも宝石でも――」
「では、早速これから家令との引き継ぎを行いますわ。私たちは、失礼します」
「おい、クロエ――」
クロエは父の呼び止めを黙視して辞去した。
視界に認めるだけで全身に嫌悪感が走った。だから、早くこの場から逃れたかったのだ。
(まずは第一歩というところね)
過去へと逆行前は、継母と異母妹にまんまとしてやられてしまった。
それは、屋敷においての実権を継母に握られたのが大きかった。彼女はじわじわと権力を広げて、最後はクロエから全てを奪った。
だから、今回はその前に手を打つのだ。
二人が来る前に、屋敷を自分中心の体制に移行させる。あの母娘の割って入る隙間もないくらいに。
(パリステラ家は、私が掌握してあげるわ……!)