ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「そうだ、クロエ。もし良かったらコートニー嬢も今日の茶会の席に加えてくれないだろうか」
「えっ」
「彼女はお姉さんと一緒に過ごしたいんじゃないかな? ね、そうだろ、コートニー嬢?」
スコットがクロエの奥を覗き込んで言うと、コートニーはちょこんと頭を出してこくりと頷いた。
「ほらね」と、スコットは片目を瞑る。
「わ……分かったわ。異母妹の分のお茶の用意を」と、クロエは渋々とメイドに指示を出した。
本音を言えばスコットとの時間を他人に邪魔されたくない。しかも自身に対して敵意を孕んでいるような子だ。
だが、婚約者がそう望んでいるのなら仕方ない。ここで拒否をして彼から失望されたくなかった。
もし断ったら、きっと優しい彼は残念に思うはずだから……。
コートニーはスコットの提案に顔を輝かせて、ぴょんと飛び跳ねるように椅子へと向かって、とすっと座った。
彼女の無邪気な子供みたいな姿に、スコットの口元は自然と緩んだ。貴族令嬢としての作法は全然できていないが、彼女にはそれを許されるような雰囲気があった。