ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


(ユリウスに会いたいな……)

 黙々と執務をこなしていると、図書館で勉強していた日々を思い出す。その流れで、どうしてもユリウスの顔が彼女の脳裏をかすめた。

 今、何気なく見ている数字の並んだ書類の見方も、彼から教えてもらったから読めるようになったのだ。
 時間がたつにつれ、現在の彼のことが気になって仕方がなかった。

(もう一度、彼とお友達になれないかしら?)

 あの日――衝動的に鐘塔の上まで登って行って、雷に撃たれる前に、最後に彼の姿を見た気がする。
 ……もしかすると、本当に彼が来てくれたのだろうか。

 逆行前は、彼のお陰で生き延びることができた。身体も心も、彼に救われたのだ。
 だから今回は、自分がなにか彼の役に立ちたい。ただ幸せを与えられる関係じゃなくて、こちらからも幸福を与えられるような、友人に。
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