ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
屋敷全体の人事には、マリアンにも携わってもらうことにした。
彼女は、逆行前はクロエの唯一の味方だった。更に、清廉潔白で不正を嫌う性格と、なにより人を見る目がある。
仮に、継母たちの息のかかった使用人が入り込んでも、彼女に強い人事権を与えていたら、逆行前のような勝手放題は避けられるだろう。
そしてクロエ自身も、従者たちとはこれまでより積極的に関わることにした。
全員の名前を覚えるのはもちろん、一人一人の性格や嗜好も知るようにして、彼らと良好な関係を築けるように努力した。どうせこの後に継母たちに使われるのなら……と、彼らの待遇も以前より良くして、働きやすい環境を与えた。
もちろん、主人としての威厳は失わないように。
誰からも絶対に侮られたらいけないと、逆行前に痛いほど理解したから……。
屋敷の運営は従者たちの協力が必要不可欠だ。だから、継母らが来る前に、彼らと結束を固めておきたかった。
それに、あの頃――幽霊令嬢だと揶揄されていたとき、彼女は侍女やメイドをはじめとする使用人たちの存在の有難みをひしひしと感じていた。
自分は、多くの人たちから支えられて生きている。
侯爵令嬢として快適な生活が送れるのも彼らの努力の賜物なのだ、と。そのことは、彼女の価値観に大きく影響を及ぼしていたのだった。