ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「……クロエ、なんだか雰囲気が変わったようだけど、どういった心境の変化なんだい?」
お茶を飲んで一息ついたところで、スコットが遠慮がちにクロエに尋ねた。
彼は少し困惑した顔をして、おずおずと彼女の全身を見ている。
今日のクロエのドレスは、黒を基調として、ティアードスカートの切り替え部分に、彼女の瞳の色に似た深緑のチェック柄をあしらったデザインだ。
それは、清楚な彼女のイメージとはかけ離れた、少し大人っぽいドレスだったのだ。
ちょうど今日の午前中にブティックの一行がパリステラ家にやって来た。
そこでクロエが選んだのは黒、黒、黒……。
喪服のようなドレスの山にマリアンは顔を真っ青にして、ひっくり返りそうになった。そして今度は顔を真っ赤に変えて、猛反対を訴えクロエと喧嘩にまで発展してしまった。
それでもクロエは、「これから女主人として屋敷を背負っていく決意表明なの!」などと頑として譲らず、結局は侍女が折れることとなった。
マリアンは、クロエのこれまでのような楚々とした可愛らしさをなんとか維持しようと、メイドたちと相談して、明るい雰囲気のヘアメイクを心がけたのだった。