ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「あれ? そのネックレスは……」
そのとき、スコットはコートニーの胸元に飾ってあるリボン型のネックレスに自然と目がいった。
それは、たしかに彼が婚約者の誕生日に贈ったネックレスだったのだ。
刹那、クロエの顔がみるみる青ざめて、
「スコット、これは――」
「これですかぁ~?」コートニーの馬鹿みたいに明るい大声が異母姉の震える声を遮った。「これはぁ~、お異母姉様からいただいたの! コートニーに似合うから是非に、って! 可愛いでしょ?」
「えっ……? そうなの?」と、スコットは顔を引きつってクロエを見た。彼の瞳にはうっすらと暗い翳りが映っていた。
このネックレスは、スコットがクロエのために、なにが似合うか一生懸命考えて用意したプレゼントだった。愛する婚約者のために、彼女が一層魅力的に見えるようなデザインを依頼して作ってもらったものなのだ。
(それを……こんなに易々と異母妹に譲るなんて……。あんなに喜んでいたのに本当は気に入らなかったのか…………?)
それは、スコットの胸に黒い絵の具が一滴垂れた瞬間だった。