ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜



 深まる疑問を解決させたきっかけは、ひょんな出来事からだった。

 父ロバートが、大切な物を無くしたと連日大騒ぎをしていた。
 それは、彼の最愛であるクリスとコートニー母娘から誕生日に贈られたペンだった。彼は、毎日そのペンを上着のポケットに入れて持ち歩き、愛用していたのだった。

 ある日、クロエが考え事をすると一人で屋敷の裏庭を散策しているときに、その大切な大切なペンを見つけたのだ。

(先日、庭で打ち合わせをしていたときに落としたのかしら?)

 クロエがそれを拾ったとき、首にかけたペンデュラムが微かに光った気がした。

「…………」

 そのとき不意に、身体中にびりびりと電撃が走るような、ある閃きが起こったのだ。

 彼女はその場でしばし思案をしたあと、

 ――バキッ!

 彼女は、父親が大切にしているペンを力任せに真っ二つに折った。
 芯から折れたそれは、もう二度ともとに戻ることのない悲惨な状態になってしまった。
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