ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

「…………」

 彼女は、両手で折れたペンを包み込む。
 そして体内の魔力を勢いよく流し込んだ。治癒と同じ魔力を。
 すると、両手の中の空洞が淡く光を発した。

 ぼんわりとした明かりが収まると、上に置いていた右手をそっと離した。

「やっぱり……!」

 そこには、さっきまでの真っ二つに折れた無惨な姿は跡形もなく消え去って、もとの通りの、紺色の艶めくペンが鎮座していたのだ。

「っ…………!!」

 クロエは目を見張る。でも口元は綻んでいた。
 ふつふつと高揚感が浮かんできて、胸に早鐘が鳴った。

 聖なる魔法の正体は、これだったのだ。

 それは癒しの力なんかじゃない。ただ、対象の時間軸を魔法で動かしているだけだ。
 そう、たしかに「動かして」いるのだ……。
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