ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(そう言えば、逆行前は彼に手紙が届かなかったみたいなのよね)
婚約者への手紙の返信を綴っているとき、クロエはふと昔の記憶を思い出した。
逆行前の過去、ネックレスの誤解をとこうとスコットに送った手紙を、彼が受け取っていなかったようなことが何度かあった。それ以前に、彼が送ったと主張していた手紙が手元に届いていなかったこともあった。
もしかすると、それは継母の策略だったのかもしれない。
(きっと、そうね……)
クロエは苦笑する。あの継母なら然もありなんだ。
まぁ、今となっては、もうどうでも良い話だ。
仮に継母から二人の交流を阻まれていたとしても、自分も彼も、それを乗り越えようと、魂の底から真剣には動かなかった。
……自分たちは、所詮その程度の関係だったのだ。
念のため、今回は通信や伝達などの情報は、あちらの手の者に触れさせないようにしておこうと思った。
この警戒ができただけで十分だ。