ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(よし、種はまいたわね……)
クロエは、ほくそ笑んだ。不安を蓄積させて、疑心暗鬼になるといい。
そして最後は、互いに信頼できなくなった夫婦二人で共食いをするのだ。仲良く地獄へ落ちればいい。
「侯爵家の者としての品位を保つには不十分でしたわね、お父様。でも安心してくださいませ。お屋敷での予算配分は私が再度編成いたしますので、お二人には侯爵家にもっと相応しい身なりをしていただきます。そして、マナーや教養も。私が責任を持って、再教育をいたしますわね」
くすり、と貴族特有の皮肉まじりの冷笑を浮かべて、あからさまな挑発をする。
顔を真っ赤にして怒りを滲ませている二人を見るのが愉快だった。ずっとこの顔をさせたいものだ。
屋敷においての主導権は、これからも自分が握り続ける。
絶対に継母には渡さない。
絶対に負けてはならない。
そのためにも、情や優しさなんて、かなぐり捨てる。