ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(なんなの……この生意気な小娘は…………!)
クリスの全身は怒りでたぎったように熱くなっていた。
ふるふると震えながら握りしめた右手に、整えられた長い爪が食い込む。
生まれたときから蝶よ花よと育てられた貴族のお嬢ちゃんなんて、赤子の手をひねるように簡単に潰せるかと思っていた。酒場の女からから侯爵夫人にまで上り詰めた自分の敵ではない、と。
しかし、この状況はなんだ。この小娘は、明らかに自分たちを沈めにかかって、しかも先手を取られてしまった。
こんな屈辱……初めてだ。
(許さない……)
ただでさえ長年の間、自分と娘の本来の場所に居座っていた図々しい娘。
これから、死ぬより辛い地獄を味あわせてやる……。
(この女、殺す……!)
一方、コートニーも、母と同じく異母姉への激しい憎悪を胸にみなぎらせていた。
こうして、クロエ対クリス、コートニーの戦いが幕を開けたのだった。