ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「別にいいわよ」
コートニーが泣いて抗議をする前に、クロエがさらりと言い放った。
思いがけない長女の発言に、三人とも驚いて目を見張る。
「い、いいのか……?」と、ロバートがおそるおそる尋ねた。
クロエはにっこりと笑ってから、
「えぇ。私は構いませんわ、お父様。ただ、一つ気になることはありますが……」
今度は困ったように少し顔を俯かせた。
「どうした?」
「その……あまり大きな声で言いたくはありませんが、この部屋は代々パリステラ家の長子ものですよね?」
「あ、あぁ。そうだな」と、ロバートは娘の意図が分からずにぎこちなく頷いた。
「私は女なのであまり関係ないのかもしれませんが、代々のパリステラ家の跡取りである長子は、家を代表するほどの魔力の高さだった、と。……稀にですが、長子が次子より魔力が低い場合は後継者の座を外されて、一番魔力の高い者が跡取りとなり、この部屋を使用していたと聞き及んでいます」