ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
クロエはきりりと姿勢を正して、父親に向き直す。
「そこで、私から提案があります。もし、これからコートニーが私の魔力を越えることができたら、そのときは喜んで部屋を譲りましょう。しかし、残念ならがそれが叶わなかったら、お父様が決めた部屋のままでいてください。――コートニー、どうかしら? きっとお父様も、大好きなあなたへの協力は惜しまないわよ。いつも、私より強い力を秘めているって、褒めているのですもの」
「望むところよ……!」
次女は唸るように言い放ち、突き刺すように長女を睨め付けた。
……気に食わない。
たまたま正妻のもとに生まれて、たまたま早く生まれただけで、なにを偉そうに。
(馬鹿にしやがって……。絶対にこの女より高度な魔法を使えるようになってやるっ!!)
剣呑な空気が部屋中に蔓延した。敵意がはびこって、びりびりと肌が痺れるような雰囲気だった。
「そ、そうだっ!」重い空気に耐えられなくなったロバートが出し抜けに声を上げる。「そろそろ晩餐の時間だ、皆でダイニングルームまで行こう。全員で新しい家族の門出を祝おうじゃないか」