ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(帝国の第三皇子ね……)
クロエはしばし思案する。たしかに、悪くはない話だ。
自分としても、スコットとは絶対に一緒になりたくない。それに、外国へ嫁げば継母と異母妹はもちろん、父の顔も二度と見なくて済む。
その第三皇子とやらに頼み込めば生家とは絶縁させてもらって、パリステラ家になんの恩恵も与えられないようにすることも、できるかもしれない。
(ユリウス……)
なぜだか、卒然とユリウスの顔が思い浮かぶ。すると胸がきゅっと苦しくなった。
彼は今、どうしているのだろう。
なんだか妙に気になって仕方がなかった。
一拍して、軽く息を吐く。今、自分がすべきことに集中しなければ。
(いえ……駄目よ。私の目的は違うところにあるわ。結婚でここから逃げては駄目……)
ちらりと継母と異母妹を見る。二人とも悋気のこもった苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
(そう言えば、コートニーにはまだ婚約者がいないのよね……。これは使えるかも……!)