ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
彼女が放心状態でいると、
「コートニー、今日は初めてだから仕方ないわ。天才ではない限り、いきなり魔法を使えるなんてありえないから。だから、気にしないで?」
忌々しい異母姉がぽんと軽く肩を叩いて慰める。その瞳は優しさで満ちていて、家庭教師は「さすが聖女様だ」と感激していた。
「まっ……」異母妹は姉の手を振り払う。「ま、魔力の流れは感じましたから! すぐにお異母姉様に追い付くわっ!」
――とは勢いよく言ったものの、彼女は焦っていた。
魔法を発動するどころか、魔力の流れさえ感じない。
このままでは、憎き異母姉に差を付けられる一方だ。
「その意気よ、コートニー。一緒に頑張りましょう」と、クロエは愛おしそうに微笑んでみせるが、心の中では嘲り笑っていた。
(ま、あなたの体内の魔力の時間は止めてあるから、魔法は一生使えないでしょうね……)
クロエは密かにコートニーに魔法をかけた。彼女の体内に内包する魔力を完全停止させたのだ。
これを解除しない限り、異母妹は一生魔法を使えない。
(魔法が使えなくて、失望や嘲笑を浴びる気持ちを、たっぷりと味わいなさい……)